桜や緑とともに。眺めのいい平屋

桜の木が連なる公園に面した住宅地。プランは、眺めをどう取り入れるか、
そして夫妻が希望した平屋、シンプルという条件を重ね合わせて導かれた。

　K夫妻からリクエストされたのは、まず平屋であること、そして和の匂いのするシンプルという方向性だった。「シンプルな和は、好きな北欧の家具にも似合うだろうと思ったんです」とKさん。これらの条件をもとに、アーキトライブの中野さんはプランを練り、夫妻とやりとりを繰り返して現在の形にまとめていった。最大のポイントは、細く横長に切り取った窓。
「『これ』という決め手がひとつでもあると、家はうまくまとまる」と中野さんは言うが、K邸の場合はそれが横長の窓だった。ダイニングキッチンにあるスリットの窓からは、道路を挟んだ公園の桜やその先の堤の縁が眺められる。ダイニングチェアに座ると、桜の梢と空だけが見え、道路を往来する人や車からの視線はうまく遮られるという絶妙の高さだ。
　スリット窓のあるダイニングとリビングの間には、ステップを設けて段差がつけられているが、これによって「ワンフロアにアクセントをつけた」と中野さん。プランニング当初、奥さまから「家族の気配は感じたいが、見通しが良すぎると疲れてしまう」と聞いていたこともあり、工夫を凝らした結果だという。同時に「生活感を出したくない」という要望を踏まえて、パントリーや玄関収納を充実させ、ワンフロアでありながらもオンとオフの区切りの効いた間取りを実現させている。

　アーキトライブの家というと、シンプルなデザインや、すべての線がきっちりとした美しい仕上げなどが印象的だが、中野さんは「デザインも、理由や使い勝手が伴わなければ意味がない」と言う。K邸では、寝室のそばに設けることの多いウォークインクローゼットをあえて水回りに配し、洗濯から物干し、収納までをこの空間で完結させるようにした。「冷蔵庫を見せないというのも中野さんの流儀らしいんですが、見えなくても使いやすい。これを含めて、ほんとうに暮らしやすい家です」と奥さまは感想を口にした。