古民家空間を新築で提案するという発想

4年前、石川県で生まれた樂家樂座。そのユニークなコンセプトが人気を呼び、年間実績を20棟に伸ばすというちょっとした「古民家ブーム」を起こした。でも、この家が語るのは、単なる古き良き時代の郷愁だけではない。1棟1棟に託された思い、家族一人ひとりの未来に広がる夢と希望。物語は、これからはじまるのだ。

昔ながらの家並みが残る市街地。通りから少し奥に入ると、以前からそこに佇んでいたかのごとく新築の日本家屋が出迎える。旗竿地という条件の中で、可能な限り明るく開放的な住まいをリクエストしたというSDさんご家族。横に長い建物の内部には、LDKが一直線に配置され、吹き抜けのハイサイドからたっぷりの陽光が降り注ぐ。日中なら照明も必要がなく、また開放的な間取りが家中に一体感を持たせている。光や風、生活動線だけでなく、家族の心の繋がりを遮る要素も見当たらない。
ダイナミックな梁、昔ながらの自然素材と手づくりの意匠、囲炉裏の間…。古民家建築ならではの雰囲気を再現しながら、ユニバーサルデザインという現代に求められる空間づくりの概念も垣間見える。車いすを利用するお子さんに合わせて、玄関スロープやリビングに面した広い脱衣室などを設定。「バリアフリーを意識したというより、家族の暮らしを考えた結果、自然に生まれたプランでした」とはご夫婦。段差などのバリアが少ないため、小さなお子さんたちや招かれたご両親にとって、また数十年後のご夫婦にとっても、安全で快適な住まいになるのだろう。