シンプルとは「凝縮」。思いを詰め込んだ木箱の家

｢角地を生かし、外観に特徴を出したい」。その要望にビルダーは２階の外壁をレッドシダーで囲んだ。そして誕生したのが木の箱のような家。室内も無垢材の質感に満ちた心地よい空間だ。

　建売住宅を買うのではなく、注文住宅を建てたい。そう考える人は多い。世界にひとつだけの「わが家」をつくるために、ビルダーは一人一人にヒアリングをする。「あなたと家族は、この家でどんな暮らしをしたいですか？」と。現在のライフスタイルを聞き、その上で新しい暮らしへの夢を家族全員からひとつずつ聞き出していく。
　「最初は、山ほどご要望が出てきます。でも、打ち合せを重ねるうちに、余計なものが落ちていく。そして本当に必要なものが残る。こうして生まれるのが『世界にひとつだけの家』ではないでしょうか」と言うのはＫ．ＤＥＳＩＧＮ ＨＯＵＳＥ／桐生建設の桐生和典さん。家づくりは、つくり手と住まい手の共同作業。同社の手がける家がシンプルなのは、こうしたプロセスを経ているからなのだ。
　Ｈさんは、奥さまと娘さん２人の４人家族。お子さんが大きくなって住んでいたアパートが手狭になり「家族みんなが楽しく暮らせる住まいをつくろう」と考え始めたのは去年のことだ。アンテナを張りめぐらせて求めた土地は、目の前に広大な田んぼが広がる住宅地の一角。娘さんの学区が変わらないことを条件に選んだ場所だという。そして肝心のビルダー選びは「住宅情報誌で特に気になった」という桐生建設をはじめ数社に資料請求。「実際に建てた家を見させてもらい、そのデザインが気に入ったのはもちろん、何よりも桐生さんの人柄に引かれました」とご主人は決め手を振り返った。