信州で暮らす、信州で働く。

出張のついでにと、家族で過ごした信州の夏。
白い雲が浮かぶ広い空と、蒼い峰を輝かせる山たち。
目の前で揺れる緑の稲が、風の行き先を教えてくれる。
こんな景色のなかで暮らせたら―
そう願った家族が、自分たちらしい
〝信州暮らし〟を形づくるまでの物語。


　高く低く連なる山に囲まれた上田市の田園地帯。まるで緑の海のように一面の水田が広がる場所にあるのが、Oさんの住まいです。北側のウッドテラスに面した窓からは、風になびく稲や空を流れていく雲の、日々刻々と表情を変えるさまを眺めることができます。
　Oさん一家は東京から信州に移住して3年目。東京の企業にお勤めのご主人と奥様、お子さんたちの4人家族です。
　信州暮らしのきっかけは数年前、Oさんの長期出張先がたまたまこの町だったこと。「どうせ長く出張するなら、家族を連れて行ってみようと。わずかな間でも東京を離れて、妻や子どもたちとの時間を取りたかった」と当時のことを振り返るOさん。満員電車での長距離通勤、隣人の顔も知らない希薄なコミュニティ、誰もがせき立てられるように生きる都会の日常に、知らず知らず心が疲れていたのだといいます。
「初めて来たとき、空が広くて〝なんて爽快な景色なんだ〟って感動したんです。町を行き交う人たちの雰囲気も活気があるのに穏やかで。縁のない土地で暮らすなんて思ってもみなかったけど、ここで家族と過ごしたひと月が忘れられませんでした」
　夫妻は悩みながらも移住を決意。最大のネックだった仕事も、町のコワーキングスペースに勤務先のサテライトオフィスを置くことで解決したそう。「テレワークできる環境が整っていたのも決め手でした。月に数回東京の本社に行く以外は、上田で業務ができるんです」とOさん。こうして一家は信州での暮らしをスタートさせました。　……続きは誌面でどうぞ