のびやかな大樹の家

路地を抜けると、突然大きな家が現れた。
そのどっしりとした存在感、空へ伸びる屋根の潔い線は、
森の中にそびえ立つ大樹のよう。
そこに暮らす家族を優しく包み、
木の香で満たす手仕事の家を訪ねた。


　のびやかな空間の広がり、風格ある日本建築をベースに、現代らしい軽やかさと機能性を融合させたデザインが「和モダン」の枠を超えた存在感を放つM邸。 　
　オーナーのMさんは東京に単身赴任中で、家族と過ごせるのは週末だけ。多忙な生活の中で「長野らしい自然を感じられる木の住まい」への思いが募っていったという。おりよく奥様の実家から敷地を譲り受け、イメージに適うと以前から足繁く見学会に通っていた熊木住建の女性建築士・有坂さんとプランニングを開始。 　
　直接話す時間は限られていたが、間取りの希望から造作部分の仕様まで、東京のMさんと長野の奥様、有坂さんは数百通ものメールのやり取りを重ねた。顔を合わせる機会は少なかったものの、「私たちの希望を的確に受け止めて、デザインやコストなどプロの視点で誠実に応えてくれました。女性ならではの細やかな提案もすごくセンスが良かったですね」。 　
　有坂さんは「建坪の大きな物件ですから、生活動線を間延びさせない配置を意識しました。大きくて存在感のある梁や無垢板の床と白壁のバランスで、素朴すぎない自然美を感じられるようにしています」と設計の意図を話す。リビングの透かし階段や廊下も、大人二人が余裕ですれ違える広さ。室内との調和や人の動きへの影響を考えた、上質なゆったり感が演出されている。 　
　さらにMさん夫妻を感激させたのが、同社の職人たちの真摯な仕事ぶりだ。奥様は「いつ来ても整頓された現場で、若いのに丁寧で腕のいい職人さんばかり。熊木さんに頼んで本当に良かったですね」と笑顔を見せる。