家族が〝きゅっ〟とくっついて暮らせる、
小さくてのびやかな家

　お昼どきのT邸では、ダイコクファニチャーの大きなテーブルいっぱいに料理が並びます。
パンや漬物も自家製という料理上手な奥様が腕を振るうのは、無塗装のスギ材を使ったキッチン。「リビングから目に入る生活感を軽減したい」とキッチンの作業スペースはあえて壁側に。奥行きのあるカウンターへ調理家電や冷蔵庫が収納されています。 　

　小学生から2歳まで3人の男の子がいる一家の食卓は、賑やかな会話もてんこ盛り。
「おにぎりおかわり！」「あっぼくも」「麦茶こぼれちゃった……」なんて。でもこの家には、子育てに奮闘する夫妻の苦労も包みこむ懐の深さを感じます。建坪29坪とは思えない広がりと居心地の良さは、天井高を抑えることで視線を横に誘導する設計が生み出したもの。そして無垢の木を自在に使いこなす技術と、品の良い造形が醸し出すくつろぎ。
「この家にいると、窮屈さはないのに家族が〝きゅっ〟と密着した感じがするんです。表情や声の調子でなんとなくお互いのことが察せるくらい。子どもたちが大きくなっても、心の距離が近い関係を保てるんじゃないかな」とTさん。家事に追われる奥様も「子どもたちとデッキで絵本を読んだり、おやつを食べる時間ができたんです。毎日を楽しめるゆとりがもてました」と話します。

　人の心まで見つめた設計、いい素材と手仕事がつくりあげた住まいは、住む人の暮らし方まで自然体に変えてしまうようです。