家具からはじまる家づくり

そもそも住まいとは何だろう。単なる雨露をしのぐ器と考えるなら、コスト最優先でいいのかもしれない。災害から家族や財産を守るシェルターと考えるなら、強度や耐震性を重視すべきだろう。生活を営むステージと考えるなら、ライフスタイルが間取りや機能性を決めてくれるはずだ。でも、生涯を過ごす場所だから、それだけではどこか物足りない。自分らしいとか、思わずホッとするとか、楽しいとか。そんな曖昧でつかみどころのない要望こそ、住む人にとって大切だったりする。だからこそ、家づくりのパートナーには、価値観の合うプロフェッショナルが欠かせない。

スティーブ・ジョブスの伝記※によると、彼は家具や家電ひとつ選ぶにも、納得するまでじっくり時間をかけたという。さまざまな製品の性能やデザインなどを比較し、どこを重視してどこをあきらめるべきか、何週間も家族で話し合った等々。ソファ選びに至っては、「そもそも家具とはなんぞや」を8年間も考え続けたというエピソードまで紹介されている。極端な例だったかもしれないが、どんな場合でも衝動買いより、熟考を重ねて厳選するほど失敗のリスクが軽減されることに違いはない。
家づくりの場合も、同じことがいえるだろう。人生最大の買い物だけに、吟味する時間と労力を惜しむべきではない。ただ、既製品を比較検討する商品選びと違って、無から生み出す作業が多くなる。そこで欠かせないのが、家づくりに精通したプロであり、また施主と価値観を共有できるパートナーの存在だ。