片流れ屋根に覆われた
スキップフロアのコートハウス

家づくりには、数値化できない要素が少なくない。単に住む人が無理なく過ごせて、行動しやすい空間を設計するだけなら、性能や機能を検討し、人間工学に基づいた寸法を求めればいいだろう。でも、暮らしを楽しみ、人生を豊かにするためには、それだけだと足りない。美しいとか、ワクワクするとか、心が癒されるとか。情緒的なエッセンスが加わったとき、はじめて愛着ある我が家になるのだ。

周囲に山並みが広がる緑豊かな住宅街に、真っ白な外観のTT邸が佇む。片流れの大屋根は、よく見ると正面2階の外壁までをグルリと覆っている。雪が多い地域ということからインナーガレージが採用され、通りからは、その先にある中庭の植栽を垣間見ることができる。
正面側がガレージとその上にあるLDKの2階建て、奥側が中庭を挟んでプライベートスペースを集めた1階建てになっている。高低差のある敷地をそのまま利用して、中庭から奥が一段上がったスキップフロアが提案された。片流れ屋根の勾配を活かした傾斜天井も、レベル差のある床とともに変化のある室内シーンを描く。
外観と同様に白で統一された内装は、TTさんご家族の要望。シンプルを極めたインテリアデザインでも、不思議なほど無機質さを感じない。ムダな要素を削ぎ落としながら、暮らしに必要な仕掛けを付加する「プラス思考のデザイン」だからなのだろう。