つながり感と隔たり感をほどよく楽しむ住まい。

吹き抜けのあるリビングとそれに続くダイニングキッチン。ひとつの空間で開放的につながりながら、床の段差がもたらすさりげない隔たりが、より落ち着いて感じられる。

テクスチャーの異なるガルバリウム鋼板を組み合わせ、シンプルながらも豊かな表情を見せている外観。いくつものハコを小気味よく重ねたスタイルも、変化にとんだ住空間を連想させる。建物の裏手には緑の遊歩道が続き、秋には紅葉した樹木が艶やかな背景を努めてくれる。そう、白い壁は、周囲の自然と響き合うためにあるのだ。
西日が傾きはじめ、あたりをオレンジ色に染めるころ、玄関灯もエントランスにうっすらとグラデーションを引いてゆく。晴れた日の夕暮れに一瞬だけ訪れる、マジックアワーと呼ばれるひととき。それは、自然と建築がひとつになり、もっとも美しさをまとう瞬間でもある。
この恵まれたロケーションを住空間にどう生かすか。西側を大きく開いて惜しみなく緑を取り込みたいところだが、遊歩道という性質上、犬の散歩やウォーキングなど人々の往来も多い。そこで、室内から緑を眺めつつ、外からの視線は気にならないよう、窓を高めの位置に設定し、横に長いピクチャーウィンドウとした。室内に入るや、緑がパノラマ状に目に飛び込んできて、なんともさわやかな気分だ。
また、リビングに面して設けられた中庭風のテラスからも遊歩道を眺めることができ、一年を通じて四季の移ろいとともに暮らせるのがうれしい。