健やかな笑顔をそっと支える
やさしい住まい

会社を定年後、脳出血に倒れ右半身が不自由になったIさんは、ご夫妻で共に歩む新たな暮らしに最適な住まいづくりを、アイ・アーキテクトに託しました。ご主人には無理なく暮らせる居心地のいい空間を、奥様には介護しやすい快適な空間を。つくり手が住まい手に寄り添ってつくる住まいには、安心の暮らしを育む心遣いが詰まっています。

以前は築80年ほどの住まいで生活をしていたI夫妻。昔ながらの住まいは段差が多く、冬の結露もひどく、車椅子のご主人は一つの部屋から移動できず、何をするにも奥様の助けが必要だったそう。そこでまず必要だったのが、ご主人ができる限り自分で動くことができるバリアフリーな空間でした。各部屋はすべて車椅子が通れる段差のない通路でつなぎ、回遊性のある間取りを実現。壁には、車椅子がぶつかっても当たりが柔らかいようにと、腰板を設けました。腰掛けるのにちょうどいい高さの掘りごたつ式にした畳スペースには、テーブルにカーブを付けるなど、車椅子のままでも食事ができるよう工夫が。また、トイレや浴室の設計には、入院していた医師にも相談をし、Iさんが使いやすい高さや介護する人が入りやすい幅・位置などを細かく確認。玄関にはスロープを設置したため、外出も楽になりました。「何より、誰かに手を借りなくても、思うままに動ける範囲が広がって、自分でできることが増えたのが、一番うれしい」と語るIさん。奥様もご主人の介護をしながら、自分の時間を持つことができるようになり、2人でゆったりとした時間を過ごせるようになったといいます。住まい手の暮らしやすさに細部まで心をくだいた空間からは、「暮らしのストレスを最小限にしたい」という、つくり手の心からの思いが伝わってくるようでした。