思い出とともに蘇る、古民家の再生。

昭和から平成へと移り変わる時代を、家族の成長とともに生き抜いてきた古民家。一度は現代風に改築された住空間を、確かな民家再生の技で建築当初の姿に蘇らせました。あの頃の佇まいと今の暮らし良さを兼ね備えた、懐かしくて新しい. 終の住まい“です。

人生を重ねるほど、人は昔を懐かしく思い起こすことが多くなるようです。幼い頃に見上げた、高い天井に横たわる大きな梁。縁側から眺めた、庭の樹木。裸足で歩いた、無垢の木の感触。「もう一度、あの頃の民家の雰囲気に戻るものなら」…そんな思いでＴ様は、住み慣れた古民家を再生されました。
築約70年のT邸は、これまでに一度、大規模な改築を行っていました。昔ながらの田の字の間取りは子育て中の暮らしには不便が多く、高い天井は建材で塞ぎ、合板で部屋を細かく仕切ることに。しかし、時は流れ、子供達が大人になると、今度は改築部分の老朽化が目立つようになってきました。一時は建て替えの話も出ましたが、定年後、家の中で過ごす時間が多くなることを考え、懐かしい風景を蘇らせる民家の再生を選ばれました。
1階部分の工事では、柱や梁などの構造材を残して解体。床下に防湿コンクリートをうち、根太や束を取り替えて耐震性、耐久性を確保しました。天井や床をめくっていくと、そこには建築当初の木材が良い状態で眠っていたそう。腐食しやすい土台（地輻）の部分も床下の束もまったく腐食がなく、立派な材料を使用していたことがわかりました。T様は毎日、解体中の現場を訪れ、感慨深げな表情で工事を見守っていました。