経年価値を高める本物の素材感と、
夫婦の「趣味」へのこだわりがカタチになった家。

一見してデザイナーが建てたとわかる、ユニークな外観。お店と間違えて入って来る人もいるというのも頷ける。設計したのはこの家の主だ。これまでお客さまの家を設計して来たキャリアの集大成といってもいい“わが家”。こだわりにこだわって、土地購入から３年をかけて完成させた。外壁に使用されているのは焼杉。これだけの面積を黒で埋め尽くしてなお、それがクールすぎずむしろ優しさを醸し出しているのは、使用している素材の妙だろう。ガラスとウッド、モルタルが絶妙なバランスで構成されている。計算され尽くした配分は、現代アートのような美しさが漂う。

中央の階段を上がって2階の玄関を入ると右手に広がるのは、LDK。夫婦で過ごす時間がもっとも多い、この家のメインスペースだ。フルオープンのバルコニー越しに緑が目に優しく、天井からも自然採光が漏れる。自然の光と風を十分に感じられ、のんびりと、心地よい。建材は「天然素材にこだわった」というだけあって、存分にその質感を感じることができる。建物全体を緩やかな勾配で覆う天井は、使い慣れたレッドシダーの天然木。床素材に使用したブラックチェリーは、「今回初めて使いましたが大成功！色味も風合いもとても気に入っています」（ご主人さま）国産のフローリングにはない赤みが上品な暖かみを醸し出している。床暖房なので、冬も暖か。照明は低い位置に配し、夜は落ち着いた灯りの中で夫婦でお酒を傾けながら映画や音楽を鑑賞する至福の時間となる。「本当はここではなく山の中に建てたかった」というのも頷ける設計だ。

「二人ともこだわりがあって、1コ1コ、決めるのにすごく時間がかかりました」と奥さまが微笑む通り、DKには思い入れと工夫がぎっしり詰まっている。「施主さんとの打合せで、何でこんなに時間が掛かるんだろって思ってましたけど、いざ自分が、となると決められないことが多くて。今はみんなの気持ちがわかります」（ご主人さま）
１本ずつ手植えされた樹木の育つ5年後、10年後、建物に経年の味が醸し出され、今よりもずっと夫婦の感性に寄り添う家になっていることだろう。家は、家族とともに育つ、そんなアタリマエが楽しみな家だ。