豊かな時間が流れる
19坪の小さな家

田園の中の小さな平屋。小粋なカフェ、と思っても間違いではない。ここは、必要最低限の広さと間取りの中にさまざまな可能性をはらんでいる。

「ミニマムな家をつくりたい」。二人のビジョンは明確だった。LDKと寝室、浴室があればいいという。つまり必要最低限の空間。ただしLDKには「いろいろなことができる可能性を持たせたい」という注文が付いた。必要最低限と多用途。相反する2つの要素をまとめるのは難しいのではと思いきや、設計した星野貴行さんは「いらないものがはっきりしていたのですぐにイメージできました。プランは、ごくシンプルに考えた結果です」と言う。その過程をたどる前に、なぜ夫妻が星野建築事務所に設計を依頼したのか、遡ってみよう。
「結婚を機に家を建てようと思った時、真っ先に浮かんだのが星野さんでした」とご主人は振り返る。実は、それ以前に仕事を通して付き合いがあった。コーヒーショップに勤めていたご主人、そのカフェの空間を手がけていた星野さん。「一緒に仕事をしていて『スムーズに事が進む』というのが第一印象でした。しかも不可能がない。『壁を取りたい』とか、難しい要望もあったと思うんですが、すぐ『分かりました』と言って対応してくれました」。不可能を可能にする。それは、家づくりでも同じという期待があったとご主人は言う。一方の奥さまは「車で通るたびに素敵だなと思っていた家があって。事務所にうかがった時、それが星野さんの設計だと知って、いろいろつながった気がしました」。そしてプランが提案された。19坪の小さな平屋だった。