満足から逆算する高性能住宅

そとん壁や杉、オークなどの自然素材を使いながら、すっきりと仕上げたK邸。
「ちょうどいい」温熱環境は、科学的な計算に基づいた性能によって支えられている。


　外壁は塗り壁と杉。玄関を入ると、床には幅広のオーク、天井にはツガの羽目板が張られ、そのままLDKへと続いている。LDKでは建具や造作家具、キッチンも木製だ。もともと「自然素材の家が欲しくてネット検索した」というK夫妻、自然素材をふんだんに使い、建具や家具をオーダーで製作するオーガニックスタジオにたどり着いたのは、ごく自然な流れだろう。ただし、これだけ木を使い、手の込んだ造作をしているにも関わらずすっきり見えるのは、あらゆる高さを揃え、細かい収まりを徹底して詰めているからだ。特に奥さまが気に入っているのは、床と同じオークを使ったオーダーメイドのキッチン。リビングとオープンでつながりながらも、ソファに座れば見えないという絶妙の位置にあり、ダイニングとともに落ち着ける小部屋のような一角をつくり出している。

　そして、このすっきりとしたナチュラルな空間を、一年を通じて快適な温度環境で満たしているのが、オーガニックスタジオが独自に提案している床下暖房システムだ。市販のエアコンで床下に暖気を送り込むことで床を暖め、さらにガラリから立ち上がった暖気が家全体を快適な気温に満たすというシンプルなこのシステム。それをエアコン1台で可能にしているのは、たとえばK邸ではQ値1.15という高い断熱・気密性能があってこそ。「オーガニックスタジオの家づくりは、満足と予算からの逆算。一棟一棟、家からどれだけ熱が逃げるかを専用ソフトで算出し、断熱性能のコストと暖房エネルギーの均衡点を探り、予算内で最大のパフォーマンスができるようにしています」。2015年には、同社が手がけた家が「日本エコハウス大賞」の優秀賞を受賞。環境に負荷をかけることなく、コストと機能のベストバランスを探る家づくりが、第三者のプロによって認められたことになる。

　さて、暮らし始めて1年になるというK夫妻。「家の中では、一年中、同じような温度と湿度ですごく快適です」と話す。その室内環境を、冬なら月2万5000円で可能にするばかりか、K邸では屋根に載せた太陽光発電で光熱費ゼロにしている。住んでみて分かる心地よさとコストパフォーマンスの高さは、設計時に快適と価格のバランスを探って織り込んだ自然な結果。K夫妻が建てる前に確信していた「大丈夫」という予感が、想像以上のクオリティを伴って実現されたのがこの住まいだ。