住んでみて初めてわかる心地よさとは

邪魔なものが何もないんです。すべてに用途があり、意味のないものは一つもない。
犬も猫も子どもものびのびと暮らせる空間。訪れた人が心地いいと言ってくれる家。
7年目を迎えた今も、みんなこの家が大好きです。

「カッコいい住宅をつくってほしい」
Mさん夫妻がT-PLANに設計を依頼したのは、ご主人が担当の祢津さんのセンスと人柄に惚れ込んだからだった。今回、建築後7年目を迎えたM邸を訪れてみた。今や多くの会社がこぞってモダンなデザイン住宅を建てるなか、7年の時を経た建物はどうなっているだろう――。
M邸は、東西南北のどこからでも見られる立地のため、外部からはいったん閉じた形にし、室内から見せたいところだけ見えるよう設計された。
この家に住んでみて初めて、奥様は祢津さんの人柄が建物の細部にまで行きわたっていることに気づいたそうだ。例えば窓の開き一つにしても、太陽が昇る方向と沈む方向とでは逆に開くようにつけられていたり、カーテンを引かずともプライバシーを保てたり、中庭の塀のライトが昼と夜で違う表情を見せてくれたり――。居住空間ではない風景までも含めて一つの空間として設計されていることに、感動を覚えたという。
「大きなフィックス窓の細すぎず太すぎない間柱も、さりげなくカッコいい。そんなところを見るにつけ、祢津さんがニッと笑っている気がするんですよ。誠実で、楽しくて、深みがあって。つくり手の人間性が建物に現れるんだなと思いましたね」
家族が不思議と一つにまとまる。気がつけば家が落ち着ける空間になっている。大きくなった娘さんはインテリアコーディネーターの道に進んだ。
あとで恥ずかしくなるような建物はつくりたくない。そう祢津さんは語る。「今回の訪問で、M邸にいい味が出ているのがうれしかったですね。大事に使ってくださっているんだな、と思いました」