伝統と現代が溶け合うハンドメイドの家

工業化が進んだ現代の家づくり。確かに高性能で均質な住まいが、手ごろな価格と短納期で手に入るようになった。でも、それは進化だろうか、それとも退化というべきか。人工的な新素材や既製品に囲まれた室内、全国各地に似たような街並みを誕生させた外観。住む人の個性やライフスタイルが多様化しても、住まいの方は急速に画一化されている。完全オーダーメイド、手づくり、オール無垢材、職人技。伝統的な日本建築の技と姿勢を基本にしながら、現代に求められる住まいを提案する中野工務店。そんな家づくりがいま懐かしく、新しく、そして心地いい。

落ち着いた和風モダンのフォルムと、ツートンに朱色を組み合わせた外壁が個性的なK邸。ポーチの両サイドにある庭の植栽が、訪れる人を四季折々の表情で迎えてくれる。ストーリー性のある空間構成。そんなコンセプトで演出された室内を中に進むと、新鮮な発見や感動が待っている。
玄関ホールでは、一枚板カウンターや棚に飾られた生け花と、中庭の情景を切り取ったピクチャーウィンドウが、おもてなしの心をさりげなく伝える。そこからLDKに入ると、変化に富んだ大空間が視界に広がる。まず目に止まるのが、リビングの壁面いっぱいを占める飾り棚。九谷焼が上品に展示されていて、ちょっとしたギャラリーのような趣だ。吹き抜けを見上げると、2つの渡り廊下が平行に架かる。まるで2階もリビングの一角であるかのように、階層を超えて対話が弾む。