南からの光をたっぷり採り込む、
吹き抜けとライトコートのある住まい。

　外の喧噪から一線を画すように、車２台分のガレージが前面に配置されたI邸。その佇まいは、どこか寡黙でありながら確固たる存在感を放っている。一見近寄り難いのに、ひとたび心を開くと満面の笑みで迎えてくれるような、そんな雰囲気のある家だ。
　西向きのガレージの裏には建物をコの字型に切り取るように、ぽっかりとスペースが開けられている。南側に近接する隣家との距離を保つことで、自然光をふんだんに採り入れるライトコートだ。「光が踊る清々しい家にしたい」。オーナーの希望を受けて、プランはそこからスタートしたのである。
　街の中心部に近いこともあり、家の前の道路は比較的車がよく通る。音とプライバシーの問題から家族を守ってくれるのがこのガレージで、いわば盾の役割を果たしている。背後のライトコートでは近隣の視線を気にすることなく、冬は雪遊び、夏はBBQを家族で心おきなく楽しむことができ、同時に室内をたっぷりの光で満たすのだ。
　コートに面するリビングには大胆な吹き抜けが設けられ、ハイサイドライトからも惜しみなく南の光が降り注ぐ。ゆるやかな曲線を描く空間はすみずみまで明るく照らされ、どこにいても晴れやかな気分を誘う。夜は夜で間接照明がアールのラインをやさしくなぞり、一日の終わりにやすらぎを与えてくれる。

　スター・ウェッジと出会うまで住宅メーカー数社にプランを描いてもらったが、「決め手になる何かが欠けていた」と奥さまはいう。どの案を見ても、すでに取得していた70坪を超える土地に建つわが家のイメージを想像できなかったのだ。
　あるとき、偶然雑誌で同社を見かけた。広がりのある空間づくりやシンプルなのにあたたかみのあるデザインに魅せられ、突き動かされるようにアポなしで訪問。持参した土地の図面をもとに、家族構成やときどき訪ねてくる両親のこと、大きめのリビングや明るい空間にしたいことなど、ライフスタイルや住まいに対する想いを伝えた。
　ほどなくして提案されたのは、道路際にガレージと車寄せを配置し、ライトコートや吹き抜けを採用したものだった。建物の凹凸を工夫しながら、採光と暮らしの楽しみを盛り込んだプランである。「こんなにわくわくするような図面を見たのは初めてでした。最初の案で見積もりをいただき、ほぼそのままのかたちで今の家が完成しました」。
　ライトコートはダイニングキッチンにも面しており、住まいの中のリフレッシュ空間といったところ。リビングとのつながりや光をやわらかく受けとめる曲線のデザインなど、すべてがお気に入りだという。