住みこなす小さな木の家

理想の暮らし方を形にする住まいづくりは、家族の要望を盛り込んだ結果、建物が大きくなりがち。素材や機能が空間にもたらす「質」と面積の「量」。限られた予算の中で、そのバランスの良し悪しは住まいの満足度に大きく影響します。この「小さな木の家」は、そんな質と量の悩みを解決したコンセプトモデル。質の良い素材に包まれた暮らしのために、量の問題を設計で解決しました。まずは家づくりの定説である「○LDK」といった個室数をベースにした考えを改める。例えばある一組の夫婦で考えたとき、夫婦二人で過ごす時間を経て子どもを授かり、幼い子どもを育む時期や思春期を見守る時期、そうしていつか子どもが独立し、再び二人で向き合う時期が訪れます。そんな家族の変化を長期的に見たとき、壁とドアで空間を隔てた個室が必要な時期はそう長くありません。「小さな木の家」は住まいづくりの様々な制約の中で、あったらいいけど優先順位が低い「個室」を最小限にし、その分を共有スペースに振り替えています。家族のそれぞれが必要最低限のものと一緒に、そのときの気分にフィットする居場所を使う。広い空間を建具で仕切ったり、目隠しを活用することによって、空間を何通りにも使いこなすことが可能です。ときに勉強部屋として、ときに趣味室として、家族の成長に合わせて柔軟に用途を変えられるフレキシブルな空間設計が、最小限の量での豊かな暮らしを実現します。